研究科長・学部長あいさつ

坪田 誠 理学研究科長・理学部長からのメッセージ

 自然を解明し世界に向けて発信しよう!理学はエキサイティングです。

理学とは

 私たちを取り巻く自然は、不思議なこと・興味深いことにあふれています。それらの現象を理解・説明しようとすると、その背後により普遍的な真理が隠れていることに気付きます。ちょうどベールを剥がすように丁寧な考察と実験を重ねると、やがて自然はその本質を垣間見させてくれます。自然科学はこのようにして発展してきました。自然の奥底に潜むからくり、すなわち理(ことわり)を探り出し、普遍化・体系化する学問が理学です。この理学の基盤の上に、現代の科学技術が成り立っています。理学無くして、科学技術の発展は無く、今の文明社会は存在しません。

 自然は、我々に対し容易にその扉を開けてくれません。自然の扉を開けるには透徹した深い思考が必要です。理学部の勉強・研究はそのような方向を目指します。それは、例えば、大学受験の勉強や、問題を解くスキルを身につけるという勉強とは本質的に異なります。問題集に載っている問題は、それがどんな難問であれ、作問者がいて、その人は答えを知っています。しかし、理学が取り組むのは、まさに自然の謎で、誰も答えを知らない問題(教員も答えを知らないし、ネットにも正解は出ていない問題)に向き合うのです。

 自分の力で、少しでも自然の奥底をのぞくことができたら、それは私たちに深い感動をもたらします。そして、それがさらなる理学研究の大きな動機となります。このような過程を経て、科学者は英知を積み重ね、自然科学を発展させてきました。本学の理学部・理学研究科では、できるだけ多くの学生・大学院生の皆さんにその感動を体験し、自然科学の発展に貢献していただきたいと考えています。

大阪市立大学理学部・理学研究科とは

 私たちの理学部は、数学、物理学、化学、生物学、地球学の5学科から構成されています。大学院理学研究科は、これらの5学科が有機的に融合した、数物系、物質分子系、生物地球系の3専攻から成ります。私たちの理学研究科は、全国的にも早くから博士課程を設置した大学院の一つであり、理学のほぼ全分野をカバーした、我が国でも有数の教育・研究拠点です。そして、2008年の南部陽一郎名誉教授のノーベル物理学賞受賞に象徴されるように、世界をリードする、多数の秀れた研究が行われています。

大阪から世界へ発信

 現在、様々な分野でグローバル化が要求されていますが、自然の理を探求する理学は、本来国境が無く、グローバルです。私たちはその研究成果の多くを国際学術雑誌に発表しています。そして、教員はもとより、毎年100名程度の学生が、実験、調査、国際会議の発表のために海外出張を行います。理学の研究に関わることが、そのまま国際的な活動を行い、グローバルな視野を持つことにつながります。

 その一方で、公立大学の理学部として地域社会にも貢献しています。本学部独自の「数学や理科の好きな高校生のための市大授業」やスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業への協力などを通じて、地域の高等教育を支援しています。様々な公開講座を行い、生涯教育事業を行っています。地域の科学技術の応用を支援し、これらの活動を通じて様々な形で地域社会の発展に貢献しています。

大阪市立大学理学部・理学研究科のこれから

 今、私たちの世界をめぐる状況は、不安定化・流動化しており、容易に将来を見通すことは困難になりつつあります。急速な変化が求められるこの時代に、スピード感を持って適切な対応を行うことは必要で、私たちの理学部も時流に遅れること無く、むしろ時流を先導する意気込みで様々なことに取り組んでいきます。その一方で、自然科学が千年の単位で我々人類の発展を支えてきたという事実を忘れてはなりません。この混迷を深める時代だからこそ、刹那的な風潮や表面的な改革に流されることなく、物事の真理を見通すという理学部の矜持を保ち、その使命を貫きたいと考えます。現在、大阪市立大学と大阪府立大学の統合に向けて、検討が始められようとしています。それがどのような形になるにしろ、理学部は、総合大学の理系の教育・研究の基盤となる存在であり続けるべきだと考えます。

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